日本の学校は9月入学に変更すべきか?

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作文・小論文
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コロナウイルス感染症の拡大に伴い、9月入学案が注目されるようになってきました。9月入学実施の主目的が、コロナウイルス感染症の拡大によって2月下旬から現時点までにおいて実施できなかった授業内容の補完をすることであるならば、私はそれに反対したいと思っています。その1つの理由は、このようなウイルスの出現は今後も起こりうることで、その都度入学時期をずらすという施策を取ることなど到底不可能だと思うからです。報道を見ていると、今回1回のみ入学時期を移行すれば今後永続的に9月入学で大丈夫という前提で話が進んでいるように見受けられます。来年や再来年に同じような事態が生じたらどうするかという視点が欠けている気がして非常に不安です。9月入学については継続して議論をいていく議題だと考えています。しかしながら、今議論すべきことはないと思います。

今回は、論点を明確にするために、コロナウイルス感染症の拡大により休校期間が生じ、その対策として9月入学を検討することになったという論点は含めずに、賛成派の主張についてまとめていきたいと思います。なお、高校生の立場を想定して書いています。「日本の学校は9月入学に変更すべきか?」について、私は現時点で反対の立場ですが、敢えて賛成の意見を書くことに挑戦します。自分の考えとは異なる立場に立って作文を書かなければならないと時もあるためです。

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日本の学校は9月入学に変更すべきである。

現在俄かに注目を集めている9月入学であるが、その検討の歴史は少なくとも昭和61年まで遡ることができる。文部科学省の「資料3 学事暦の多様化とギャップタームについて」によると、昭和61年の秋季入学に関する研究調査において「国民の学校暦観、児童・生徒等の身体への影響、学校の年間教育計画との関係、夏休みの位置づけ、入試との関係、会計年度との関係、国際交流上の利点と問題点、学生の就職、移行に要する経費など」が考慮すべき点として挙げられている。また、昭和62年の臨時教育審議会第四次答申において、秋季入学制は、「夏休みを学年の終わりとすることで、効率的な学習・学校運営が可能であり」、「国際社会との整合性、外国との交流拡大や帰国子女受け入れの円滑化され」、そして「家庭や地域、自然との触れあいなど、夏休みの活用ができる」ことから大きな意義があると評価されている。このように、9月入学に関してすでに多くのメリットが指摘されてきている。9月入学によって、小学校、中学校、高等学校、大学、全てに影響が及ぶことは必至であるが、教育を受ける立場から仕事をすると言う立場への接点である大学に注目して、そのメリットについて言及したい。なぜなら、大学以外については、大学が9月入学になれば自動的に9月入学にせざるを得なくなり、かつ、入学時期がずれるだけで実施すべき教育内容に大きな変更を加える必要はないと考えられるからだ。

まず、メリットとして、学年暦の異なる諸外国からの留学生の日本への受け入れ及びそれらの国への日本からの留学を促進できる可能性があることが挙げられる。このメリットに関しては批判的な意見が考えられうる。NHKの記事「9月入学 メリットは? デメリットは? 専門家に聞く」によると、「いまでも100を超える日本の大学で4月以外の時期に入学させている」そうだ。これは、現時点でも4月以外の時期に新入生を受け入れる制度が存在していることを意味している。その制度を使えば、現時点でも9月に留学生を入学させることはできるという批判はある。一方で、日本から諸外国への留学という観点では、教育研究家の妹尾昌俊氏は「【9月入学・新学期推進の論拠を検証】グローバル対応できるって本当? みんな一緒一斉が本当にいいの?」という記事で以下のように疑問を呈している。それは、「現在は、諸外国における大学や大学院に9月に入学する場合、3月に高校もしくは大学を卒業後、4月から8月までどこにも所属しなくなる期間、いわゆるギャップタームが存在する。そのギャップタームがなくなるからという理由で、留学しようと思う子がどのくらい増えるのだろうか?」という疑問である。前者の諸外国からの留学生の受け入れに関しては、たしかに現行制度で対応可能なところもあるかもしれない。しかしながら、9月入学が例外的な措置であることは明らかであり、例外であることによって、日本の大学においても9月入学ができると言う事実が、外国の生徒に広く認知されていない可能性はある。だからこそ、日本で教育を受けた生徒を含めて、9月入学に変更することによって、諸外国に向けてそれを伝えられるのではないだろうか。後者の日本から諸外国への留学の促進という観点においては、入学が9月になるということよりも、9月入学に伴い全ての生徒の卒業時期が6月もしくは7月になる点がメリットになると思われる。現行の4月入学3月卒業の場合、海外の大学に進学したり、日本の大学に在籍しながら交換留学をしたりした場合、3月卒業を基準として実施されている採用活動に合わせて就職活動を実施しなければならない。もちろん、ボストンキャリアフォーラムなど、留学している学生に対する採用活動も展開されているが、そういう採用活動ができるのは一部の企業だけである。9月入学6月卒業に統一されることによって、海外大に在籍する学生及び日本の大学に在籍したまま交換留学をする学生の就職活動に対する不安が軽減される、結果として海外大への進学する高校生や交換留学に舵をきる大学生が増加することが予想される。

もう一つのメリットは、日本の大学生が就職においてより真の意味での国際競争に晒されるようになるということである。「【コロナ拡大で政府検討】9月入学の現状とメリット・デメリット」という記事では、9月入学を実施している国として、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、スペイン、ベルギー、イタリア、トルコ、モンゴル、ロシア、中国、香港、台湾が挙げられている。これらの国の学生が仮に日本の企業に就職したいと思った場合、現行の制度だと、6月に卒業した後に次の4月まで待ってから入社をするということになる。もちろん、現時点でも、外国人を積極採用している会社は通年採用を実施しているが、大学卒業後の学生を通年で採用するという方式そのものは日本における主流の方式ではない。日本での新卒一括採用のシステムがいつまで続くかは定かではないが、新卒が9月から働き始めるというシステムになれば、9月入学6月卒業の国の大学生が日本の企業を受けやすくなることは間違いない。優秀な大学生が日本の企業に応募すれば、その分日本の大学生への要求水準も高まり、日本の大学生がより努力をするようになるのではないだろうか。

最後のメリットは、帰国子女の転出や編入が今よりも効率的に進められるようになることである。現在、9月入学6月卒業の国の現地校やインターナショナルに通学している児童や生徒は、日本に帰国して日本の学校に編入学する際、学年を下げて編入学したり、7月から3月までの間のギャップイヤーを過ごしてから入学したりしなければならないことが多い。もし、9月入学6月卒業になれば、この問題は解消される可能性が高い。公益財団法人海外子女教育振興財団の海外子女教育ニュースによると、帰国子女の人数に関して以下のように記されている。

2016年度の「学校基本調査」によると、引き続き1年を超える期間海外に在留し、2015年度(2015年4月1日から2016年3月31日まで)の間に帰国して、2016年5月1日の時点で国内の小学校・中学校・高等学校・中等教育学校に在籍する児童生徒の数は、前年度に比べて819人多い1万2527人(7.0%増)となった。

https://www.joes.or.jp/kyoiku_news/detail/5

この、1万2527人を多いと捉えるか少ないと捉えるかは人それぞれだと思う。しかしながら、国際化が進めば海外赴任をする人の数が増加する可能性が高い。海外赴任の際、子供がいる人にとっては教育の問題は重要な関心事の1つとなる。日本が9月入学6月卒業になれば、9月入学6月卒業の国への海外赴任を積極的に受け入れる人も増えるかもしれない。それは、日本の企業にとっても良い影響を与えるはずである。

以上のように、9月入学にはデメリットも想定されるものの、多くのメリットが存在する。そのため、手順を明確化した上で、教育現場や企業に過度の負担がかからないようにしながら、9月入学への移行を進めていくべきだと考える。

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政府機関が公表している情報

知識を増強するための参考資料として、政府機関が発表している情報へのリンクを貼っておきます。

緊急コラム「9月入学と就職」

今後の大学教育の在り方に関する世論調査〜大学の国際化〜

学事暦の多様化とギャップタームについて

高等教育関係抜粋