【学習全般】暗記する必要ってあるのですか?

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生徒から頻繁に受ける質問の1つに、暗記をする必要ってあるのですか?という質問があります。

この投稿を読んでもらいたい方は、

  • 生徒からこの質問を受けていて、それに対する回答を考えている先生。
  • 子供からこの質問を受けていて、それに対する回答を考えている保護者の方。

です。おそらくいずれの方も自分なりの答えはすでにもっていると思うので、一例として読んでもらえると嬉しいです。

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生徒の質問の意図を分析する

大辞泉によると、「暗記」は

文字・数字などを、書いたものを見ないでもすらすらと言えるように、よく覚えること

と定義されています。

大学受験において、高校で学習する内容を、「書いたものを見ないでもすらすら言えるように、よく覚えること」必要性はないので、生徒は「暗記」の必要性を聞いているのではないと考えました。

ここで、もう一度、大辞泉を見てみると、「記憶」とは、

過去に体験してことや覚えたことを、忘れずに心にとどめておくこと

と定義されています。なので、生徒はこの「記憶」のことを「暗記」と置き換えて質問をしているのではないかと思います。

そこで、「暗記をする必要ってあるのですか?」を「記憶をする必要ってあるのですか?という質問に置き替えて考えていきたいと思います。

記憶をする必要ってあるのですか?という質問は、その質問が生じる背景により、さらに3つに細分化されると思います

記憶をするにあたり優先順位を教えてほしい

これは、記憶をすることの重要性は認識しているが、学校や塾で学習するすべてのことを記憶できるだけの余裕がないので、優先的に記憶すべき内容はどれなのかを教えてほしいという状況だと思います。

この場合の解決策は、「必要最低限覚えるべきもの」を誰かに教えてもらうという方法になると思います。誰かは、学校の先生でも塾の先生でもよいので、各教科の信頼できる先生に質問をしてみるのが良いと思います。

記憶をより楽にできる方法を教えてほしい

これも記憶をすることの重要性は認識しているが、記憶の効率性を高めたいのでその方法教えてほしいという状況だと思います。

具体例をあげると、記憶の定着方法(忘却曲線、反復練習)を知りたい、三角関数の公式のように、導出方法がわかれば必ずしも暗記しなくても良いものはその方法知りたい、また、語呂合わせとかのように記憶を引き出す”フック”を知りたいというような質問になるかと思います。

この場合の解決策も、「記憶をより楽にできる方法」を誰かに教えてもらうということになると思います。誰かは、学校の先生でも塾の先生でもよいので、各教科の信頼できる先生に質問をしてみるのが良いと思います。

記憶をする必要性を全く感じない

これは、そもそも記憶をする必要がないと感じている状況だと思います。言い換えれば、インターネットが身近にあり、必要な情報をインターネット経由で即時に入手できるのだから、わざわざ覚えることの意味が理解できない。という状況です。今回のこのような思いをいただいている生徒を想定して記事を書いています。

※私自身は、3つ目の「記憶をする必要性を全く感じない」パターンしか想定していなかったのですが、この記事を読んだ友人からコメントをもらい、追記をしました。

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学校で学習をするということの目的を確認する。

記憶をする必要があるのかについて考える前にまず学校で学習をするということの目的について考えてみたいと思います。
教育基本法の第一章「教育の目的及び理念」第一条「教育の目的」では次のように記されています。

教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/06042712/003.htm

かなり抽象的で記憶との関連性を見出しにくいので、同章第二条「教育の目標」を見てみます。

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/06042712/003.htm

いずれの内容も重要だと思うのですが、民間企業で勤務した経験を踏まえると太字の部分が特に重要ではないかと思います。というのも、仕事の本質というのは、社会の発展に役に立つことを創造していくということだと思うからです。もちろん、私自身も経験した全ての仕事が創造的だったわけではありません。いわゆるルーティーン業務的なものも当然担当していました。しかし、創造を成し遂げた時には、お客様からも先輩や同僚からも非常に感謝されそして評価され、社会に寄与しているなと感じることができました。このような経験から、現時点では、学習の目的は「社会の発展に役に立つという姿勢を養い、その姿勢を結果として世に示すために必要な創造力を養う」ことだと考えるに至りました。

創造とはどのようなものなのか?

私は創造は2種類に分けられると考えています。

  1. 特定の分野における先人たちの知恵に新しい発見を加えるという創造。この創造は大学の研究のイメージに近いです。
  2. 異なる分野の知識を融合して新しい価値を造り出すという創造。研究的ではない創造はだいたいこれに該当するような気がします。

仕事をしている人のうち研究職に就いている人の割合はそこまで高くはないので、後者の創造をする力を学校で養うことを前提として議論を進めていきます。

なお、創造力の詳細及び創造力の必要性について生徒に考えてもらうための授業のアイディアについては以下の投稿にまとめてあります。興味があれば見ていただけると嬉しいです。

社会は私たちにどのような能力を求めているのか?
この授業は総合的な学習の時間で行うことを想定しています。働いたことがない高校生に対して、社会が求めている能力の1つである創造力について、それがどのようなものなのかを、動画を見たり、グループワークをしたりすることによって考えてもらうことを目的...

創造をするために記憶は必要なのか?

必要です

このように私が述べると何人かの生徒は次のように聞いてきます。

インターネットが発達している今、その検索機能を使えば即座に必要な情報を入手できるのだから、その情報を見ながら情報同士を融合すればいいのではないでしょうか。

それには限界がありますなぜなら、人間の視野は何十何百もの情報を同時に見ることができるほど広くはないからです。かつ、いま調べたいと思った情報だけを融合すればより良い創造が産まれるとは限らないからです。

記憶していれば融合できる知識の幅(横の広がり)と知識の深さ(縦の広がり)が拡大されます。
横の広がりとは、ほぼ同一の時間軸に存在している情報に関して、今自身が注力している分野以外の情報を、記憶という道具を使って引き出してくるという意味です。具体例としては、注力している分野とは関連性の薄い分野の本の中で、最近読んだ本の情報を利用することが挙げられます。
縦の広がりとは、3年とか5年とか遥か昔に記憶した情報を利用するという意味です。今注力している分野のなかで、過去に学習した情報を活用するというイメージです。
この横の広がりと縦の広がりを融合すれば、「注力している分野とは関係のなく、かつ数年前に記憶した情報」を活用できることになります。
記憶により実現可能となる、横の広がり、縦の広がり、そして横の広がりと縦の広がりの融合を活用すれば、暗記を利用しない時より創造の可能性が高まるような気がしませんか。

生徒に説明する時は以下のような具体例を使っています。
「あなたはポケモンのキャラクターの特許をもっている会社で企画業務を担当しています。そして上司から今新しいアイディアを出すように言われています。ビデオゲームはもう作ったし、アニメも作ったし、ぬいぐるみも作ったし、アイディアがもうでないよ、という状況だとしましょう。工学部出身のあなたは、ふと大学の授業でGPSの機能について勉強をしたことを思い出します。ポケモンとGPSという機能を組わせたら新しいものが生まれるのではないか。そして、ポケモンGOを開発しました。ほら、記憶していたことが役に立ったでしょう。」
もちろんポケモンGOがこのような過程を経て開発されたわけではないとは思います。しかし暗記の有用性を示すことはできたのではないでしょうか。

友人からこんな指摘もありました。

たしかに、インターネットの検索機能を使えば即座に必要な情報を得る音ができるかもしれないです。でも検索をするためにも知識が必要です。そして、暗記しているもの知識なけでば、即座に使えないのです。ぜひ以下の動画を見て、「調べることにも知識が必要だ」ということを認識してください。

以上のことから、私は記憶は必要だと思います。

記憶に関する先輩からのアドバイス

この記事を読んだくれた社会人の方からの記憶に関するアドバイスです。

人間のメモリの容量は大したことなくて、興味があることはよく覚えられるけど、興味がないことは全く覚えられないので、いろんなことに幅広く興味を持って、ふとした時に引っ張り出せるように、覚えたことを点ではなくて線、網目状になるように他の知識と関連づけて記憶に留めておくと、思いがけない時にフックが引っかかって記憶の中から引き出されてきて、助けてくれると思います。

社会に出ると教科書どおりにいかないことも多く、応用力が求められます。私は応用力には経験と知識が重要と考えていて、知識というのはまさに暗記のたまものだから、やっぱり暗記は必要だなと思います。
でも、自分が学生の時、暗記に疑問を持たずにいたかというと、必ずしもそうではありませんでした。上毛かるたは覚えたけど、百人一首は一切覚えなかった(覚えても意味がないと思った)。はたまた元素の周期表を丸暗記してみたり(役に立った覚えがないけど)。興味のないことの暗記にはかなり抵抗があったし、生徒の気持ちも良くわかります。