部活動の顧問を引き受けることによる教員の負担が話題となっています。今回は顧問として働く時間を労働としてどのように位置づけるのかという点には言及せず、部活動にもし関与するならば教員として何を意識すべきかについて考えていきたいと思います。
想定している読者の方は、
- 部活動の顧問をされている先生方
- 先生の立場からみた部活動とはどのようなものなのかを垣間見たい保護者の方
です。
部活動の顧問業務は負担であると同時にやりがいもある
私は運動部の顧問をしていました。平日に週1日休みがあり、日曜日も休みでしたので、練習は週5回でした。生徒に練習だけさせておいて、自分は職員室で他の作業をしているという形で顧問をする場合もありますが、私が担当していた部活動は、特に安全管理という観点から、顧問は基本的に練習場所にいて、生徒の様子をみたり技術指導をしたりしていました。そのため、平日は放課後3時間程度、土曜日は4~5時間程度、部活動のために時間を費やしました。18時半ぐらいに部活動を終え、採点業務や校務の残務をこなし、19時半ぐらいから授業準備を始め、夕食を挟んで23時ぐらいまでその授業準備を続けるというような毎日でした。遅いときは深夜1時ぐらいまで準備に時間をかけました。教員として最も大切な仕事は質の高い授業を提供して生徒の学力を高めることだと思っているので、部活動の時間的な拘束の長さは肉体的に大きな負担となりました。
一方で、部活動は次の2つの点でやりがいもありました。
1点目は、生徒の活き活きとやりたいことに取り組む姿をみることができる点です。生徒は自分がやりたいことを選び、その部活動に所属しているので、積極的に活動に取り組みます。授業中は元気のない生徒も部活動では元気に走り回っているのをみると、こちらも元気付けられました。
2点目は、個人ではなくグループで協力をしあって、何かを達成するという場に居合わせることができた点です。カリキュラムの観点からも教員側の準備の大変さという観点から、総合的な学習の時間を除けば、グループで何かを達成するという授業を組み立てることは、比較的難しいのが現状です。そのため、部活動という場で、生徒にグループで目標を達成する機会を提供できたことはやりがいにつながりました。
部活動の顧問として意識していたこと
私が部活動の顧問として取り組む際に最も重視していた価値観は、部活動を「生徒が自主的・自発的にかつ安心して取り組める活動にする」ということです。そのような場にするために次の2点を意識しました。
生徒の自主性・自発性の確保に関しての意識
大切なことは、「クラブ活動に対する教師自身の思いや都合を生徒に押しつけてはならない」ということです。部活動に関しては、「熱心な教員」と「仕方なく取り組む教員」という大きく2つのタイプの教員存在するよような気がします。私は時と場合によってどちらのタイプにも所属するような教員だったと思います。
「熱心な教員」の時には、クラブ活動に対する自分の夢や目標を、生徒に強要していないかどうかを常に自省しました。なぜなら、クラブ活動における主役は生徒で、そこは生徒が成長する場であり、教員の夢や目標を実現する場ではないからです。例えば、吹奏楽部において、顧問の教師が自分の理想的な音楽を実現するために生徒に練習を促したり、野球部において、教師自身が果たせなかった甲子園への夢を生徒に託したりする。このような押し付けは望ましくないと私は考えます。ただし、生徒が本当に心から望んだことが教員の目標と一致する場合は、この自省はあまり必要ないように思えました。
一方、授業準備で疲れ果てていて「仕方なく取り組む教員」になっている時には、教員が部活動に関して興味、関心が低いことを生徒に感じ取られないようにすることを心がけました。(感じられていた可能性は十分にありますが。)具体的には、部活動における生徒の自主性をより尊重し、生徒自身が部活活動の目標、内容を考えて活動していけるよう支援し、私は極力何もしないという意識で過ごしました。
いずれのタイプの教員の場合であっても、生徒が「自分たちが部活動の主役である。」と感じられるように指導を行うことが大切であると思います。この「主役である」という意識が、生徒のモチベーションやクラブ活動の継続性の向上につながるのではないでしょうか。
部活動で生徒に安心感を与えることに関しての意識
この点に関しては、生徒の不安を取り除くべく、部活動に関する教師の役割を生徒に明確に伝える必要があったと思っています。
伝えるべき役割は2つあります。
1つ目は、生徒の悩みに関する相談を受けるという役割である。部活動内で発生した問題を生徒自身の力で解決できなくなった時はいつでも教員に相談できることを、生徒に認識してもらう必要があると思いました。特に、責任を感じやすい部長や副部長、先輩との上下関係に悩む後輩に、困ったときは教師という助けがいることを知ってもらうことを心がけました。もちろん教員側も、教員同士で協力をして、クラブ活動内で発生している状況を観察して、発生した問題に随時対処します。
2つ目は、生徒の身体的な安全を確保する役割です。教師は、生徒の安全性を確保する役割があることを生徒にも知ってもらいます。同時に、生徒間で気付いた安全性に関する問題点を教師に報告するように伝えておきます。そうすることで、教師が見逃してしまった安全上の問題点、例えば、生徒の体調不良、用具等の不備に、事故発生前に対処できる確率が高まるように思えました。