レポートの書き方なんて教わっていないのに、来週までに提出しなければならないレポートの課題がでたよ。どう書けばいいの?
今年大学に入学した1年生はそう遠くない未来にこんな場面に遭遇するかもしれません。そこで今回は、良いレポートを書くための方法について、特にライティングセンターの活用に焦点をあてながら、記事を書いていきたいと思います。
みなさんは「ライティングセンター」って言葉を聞いたことがありますか?おそらく多くの大学生はその名前を聞いたことがないと思います。
ライティングセンターという言葉を聞いたことがない方は、ぜひこの記事を読んでみてください。ライティングセンターが、大学生のエッセイ作成能力を向上させてくれる機関であることがわかっていただけると思います。
この記事の内容が役に立ちそうな方は、
- レポートの書き方を学んだことがない大学生。
- レポート課題が出たけれども、どのように書いたら良いか分からず困っている大学生。
です。
今回の記事では、まず一般的なレポートの書き方を紹介している書籍を紹介します。次に、ライティングセンターという場所について説明します。続いて、それを利用するメリットについて簡潔に言及します。最後に、現時点でライティングセンターが設置されている日本の大学を紹介していきます。読者の方が在籍している大学にライティングセンターがあったらぜひ活用してみてください。
レポートの書き方を書籍から学ぶ
今回の記事はレポートの書き方を伝える記事ではないので、役に立ちそうな書籍を紹介するだけに留めます。
大学生になると多くの本を読むことになります。なので、全ての書籍を購入しているとお金がなくなってしまいます。まずは大学の図書館で読みたい本を探し、見つからない場合は国立国会図書館や都道府県の図書館を利用してみると良いと思います。
国立国会図書館の東京本館は、千代田区永田町にあります。私の感覚からだけの判断ですが、世の中で出版されているほぼ全ての書籍が揃っているといっても過言ではありません。書籍を読むだけなら無料で使用することができます。一方で、一般的な図書館が実施しているような貸出制度はありません。その代わりに、必要なページに関しては、著作権法に抵触しない範囲内で、有料でコピーをとってもらえます。読みたい書籍を検索して出庫をお願いしてからそれが出てくるまでにかなりの時間、場合によっては30分ぐらいを要します。また、コピーをお願いする場合にも、コピーを受け取るまでにかなりの時間を要しますので、時間にゆとりがあるときに、国立国会図書館を利用すると良いと思います。
日本語で書く場合
文系のレポートの書き方に関しては、私は大学の授業で教わったので、紹介できる書籍がありません。2020年4月中にレポートの書き方をまとめた記事を書きたいと思います。
理系のレポートの書き方に関しては以下の2冊がおすすめです。
理科系の作文技術 (中公新書 (624))
環境科学を学ぶ学生のための科学的和文作文法入門 (滋賀県立大学環境ブックレット 5)
前者は、作文の書き方全般について学べます。後者は、レポートの評価が低かった場合に、改善すべきポイントを例文を通して学べます。
英語で書く場合
英語のエッセイの書き方に関してはLittle, Brown Compact Handbookだけ理解できていれば十分です。あとは、大学の先生から直接指導を受けてください。
ライティングセンターとは何か
ライティングセンターの定義
ライティングセンターとは、大学等において文章を作成する際に、ティーチングアシスタントやチューターとの対話を通して、学生が文章作成力を高め自立した書き手となれるように支援する場所です(實平、2012、p.37)。
一般的にライティングセンターは、全校生徒を対象にしたライティングプロラムや学習センターの一部として位置づけられています。その規模や機能は学校により異なりますが、次の3つの要素を満たしていることが多いです(Johnstonら、2010、p.4)。3つの要素とは、1対1でコミュニケーションをすること、教えるのではなくコーチすること、そして、書き手個人のニーズを重視することです。
ライティングセンターの理念
ライティングセンターには3つの理念があります(佐渡島・太田、2013、pp.4-10)。1つ目の理念は、ライティングをその過程において指導するということです。これは、完成段階にある文章だけでなく、構想段階や下書き段階の文章も指導の対象とすることを意味しています。2つ目の理念は、領域を横断して指導するということです。この理念は、ライティングには専門領域の枠を超えて共通する問題があり、その問題をライティング指導という一領域で取り扱うことができるという考えに基づいています。3つ目の理念は、「紙を直す」のではなく「書き手を育てる」というものです。ライティングセンターでは、書き手が、チューターの助けを得ながら、「紙」をよりよくするために、どこを問題としたらよいか、またどうしたらよいかを考え、結果として文章作成力を身に付けられるようになることを目指しています。
ライティングセンターの歴史
ライティングセンターの発足時期については諸説があります。佐渡島と太田(2014)は1950年代にアメリカで発足したと述べています(p.64)。山本と兵頭(2005)は、ライティングセンターが1970年代のアメリカに端を発する機関であると述べています(p.38)。GillespieとLerner(2003)は、ライティングセンターは1970年代に発足した機関であり、そして、その時期にライティングセンターが発足したのは、大学がそこで教育を受けることを希望する多くの若者に門戸を開放した結果、ライティングに習熟していない学生が増加したためであると言及しています(pp.142-144)。また、Ertl(2011)は、ライティングセンターが拡大した1970年代という時代は、大学が様々な背景を持つ学生を受け入れるようになり、大学の規模が拡大した時期と重なると指摘しています(pp.47-48)。1980年代になると、ライティングセンターは、「文章作成指導は過程で行うことに意義があると提唱された運動とともに(佐渡島・太田、2014、p.65)」、全米へと拡大しました。佐渡島と太田(2014)は、ライティングセンターは「現在ではほぼ全米の大学にある(p.65)」と指摘しています。
2000年代に入り、日本の大学においても、ライティングセンターが設置され始めました。2004年に早稲田大学にライティングセンターが設置されました(佐渡島・太田、2014、p.64)。2020年4月3日の時点でライティングセンター(ライティングサポートデスク等も含む)が設置されているのは、14大学です。「ライティングセンターが設置されている大学の紹介」でこれらの大学について具体的に紹介していきます。
ライティングセンターを使うメリット
ライティングセンターを使うメリットは3点あります。
- 文章を書くプロセス全体を学ぶことができる。
- 自分で文章を書けるようになる。添削だと直すべき箇所と直す方法は分かりますが、いざ一人で文章を書くときに思考方法がなかなか身につきません。
- 多面的なものの見方を会得できる。チューターからの問いかけによって、新しい視点にきずくことができます。
大学在学中に、文章を作成する能力を高めておけば、社会人になってからその能力を活用することができます。社会人になると、企画書、議事録、報告書などなど、文章を書かなければならない機会が多分にあります。ぜひ、学生時代に文章作成能力を高めてください。
ライティングセンターが設置されている大学の紹介
ライティングセンターが設置されている大学を50音順で紹介していきます。
青山学院大学
青山学院大学のアカデミックライティングセンターは2017年に設立された比較的新しいライティングセンターです。ですが、ウェブサイトがとてもわかりやすくできており、力を入れていることを感じさせてくれます。日本語と英語の論文の双方を扱っています。詳細は、以下の青山学院大学公式ウェブサイトをご覧ください。
追手門学院大学
追手門学院大学のライティングセンターは日本語で書かれた文章のみを対象としています。詳細は、以下の追手門学院大学公式ウェブサイトをご覧ください。
関西大学
関西大学ライティングラボでは、勉学に関わる文章だけでなく学生生活に関わる文章も扱っています。初めての人向けの動画もあります。詳細は、以下の関西大学公式ウェブサイトをご覧ください。
国際基督教大学
国際基督教大学のライティングサポートデスクでは、ICU学部生・大学院生の論文・レポート執筆を大学院生のチューターがサポートしています。日本語と英語のいずれの言語で書かれたレポートでも相談に応じてくれます。相談時の言語も、日本語か英語のいずれかを選択可能です。そのため、英語で書くべきレポートを日本語で相談するということもできます。詳細は、以下の国際基督教大学公式ウェブサイトをご覧ください。
創価大学
創価大学のライティングセンターでは、学術的な英文の書き方について、日本語で相談ができます。詳細は、以下の創価大学公式ウェブサイトをご覧ください。
津田塾大学
津田塾大学ライティングセンターは2008(平成20)年に設立されました。早稲田大学の次に歴史があるライティングセンターだと思います。日本語と英語の論文の双方を扱っています。キャリア支援み視野に入れている点が特徴です。詳細は、以下の津田塾大学公式ウェブサイトをご覧ください。
東京大学
東京大学におけるライティングセンターは、駒場ライターズ・スタジオ (KWS)と呼ばれています。詳細は、以下の東京大学公式ウェブサイトをご覧ください。
KWSは、ALESS/ALESAに付随したライティング支援システムです。ALESS/ALESAは、それぞれActive Leaning of English for Science Students/ Active Learning of English for Students of the Arts の略称です。ALESSは理科系の1年生、ALESAは文科系の1年生を対象にした英語ライティングの必修科目となっています。ALESS/ALESAについては以下の大学公式ウェブサイトをご覧ください。
東京都立大学
東京都立大学には、日本語アカデミックライティング支援があります。日本語で書かれたレポートや論文を対象としています。ウェブサイトには、初めての人向けの動画もあります。詳細は、以下の東京都立大学公式ウェブサイトをご覧ください。
名古屋大学
名古屋大学のライティングセンターは、英語、日本語、フランス語、そして中国語で文章に関する相談をすることができます。詳細は、以下の名古屋大学公式ウェブサイトをご覧ください。
一橋大学
一橋大学には、ライティングセンターに相当する機関として、EDGE Self-Access Center(自律学習支援室)(略称:ESA)があります。商学部に設定されていますが、商学部以外の学生も利用可能のようです。英語力を高めることを目的としています。詳細は、以下の一橋大学公式ウェブサイトをご覧ください。
広島大学
広島大学のライティングセンターでは、日本語と英語の論文の双方を扱っています。詳細は、以下の広島大学公式ウェブサイトをご覧ください。
名桜大学
名桜大学のライティングセンターは、沖縄県内では唯一の組織的に文章作成を支援する仕組みが整ったセンターです。在学生用ですが、アカデミックライティングの方法を体系的に記した資料が掲載されています。他大学の学生でも閲覧だけはできるようです。詳細は、以下の名桜大学公式ウェブサイトをご覧ください。
立命館アジア太平洋大学
ライティングセンターは、立命館アジア太平洋大学の学部生の日本語および英語のアカデミック・ライティングスキルを向上させることを目的として、 2011年4月に開室されたものです。詳細は、以下の立命館アジア太平洋大学公式ウェブサイトをご覧ください。
早稲田大学
早稲田大学では、早稲田大学アカデミック・ライティング教育部門(GECが提供する五つの基盤教育部門の一つ)が提供する2種類の教育実践のうちの1つとしてライティング・センターが活用されています。なお、もう1つ実践は、初年次生向けの授業「学術的文章の作成」です。
早稲田大学のライティングセンターは日本で最も歴史をもつライティングセンターです。そのため、多様な知見が蓄積されていると思われます。早稲田大学のライティングセンターの詳細については、以下の公式サイトをご覧ください。
また、早稲田大学のライティングセンターでの実践について興味がある方は、文章チュータリングの理念と実践―早稲田大学ライティング・センターでの取り組みをご覧ください。
まとめ
ライティングセンターは、添削指導とは異なるメリットがあります。1対1で対話をするため、初めて利用をするときは緊張するかもしれませんが、チューターの方は専門の指導を受けている方ですので、適切な質問を投げかけてくれるはずです。
ライティングセンターは、構想段階、すなわち、書くべき内容に関するブレーンストーミングを実施している段階においても、非常に有益です。課題の締切直前に利用をするのではなく、課題が出された直後に利用することをおすすめします。
参考文献
日本語文献
佐渡島紗織、太田裕子(2014)「文章チュータリングに携わる大学院生チューターの学びと成長-早稲田大学ライティング・センターでの事例-」『国語科教育』75、全国大学国語教育学会、pp.64-71.
實平雅夫(2012)「日本語日本文化教育におけるライティングセンターに関する一考察」『神戸大学留学生センター紀要』18、神戸大学、pp.37-50.
山本泰、兵頭俊夫 (2005)「教養教育モデルの発信拠点を目指す―東京大学教養学部付属教養教育開発機構の挑戦―」BERD 2、pp.34-39.
英語文献
Ertl, John(2011)”The Role of Writing Centers: Student Learning Centers in the United States and their Applicability for Japanese Universities” Forum of Language Instructors, 5: pp.45-61.
Gillespie, Paula, and Neal Lerner.(2003)The Allyn and Bacon Guide to Peer Tutoring. 2nd ed.New York: Pearson/Longman.
Johnston, Scott. et.al(2010)Handbook on Starting and Running Writing Centers in Japan.
最後に
個人で調査をしておりますので、データに正確性に対する責任は負いかねます。 また、調査に誤りがあればご指摘いただければ幸いです。