実質的な時間外労働である部活動の顧問業務に対して正当な残業代が支払われていないのが現状なので、この点を考慮してしまうと労働に対して給料は安いという結論になってしまいかねないので、今回は部活動顧問をしていないという前提のもとで、給料の多寡について考えてみたいと思います。
当たり前だろうと怒られてしまいそうですが、給料を高いと思うか安いと思うかはその先生の働き方に依存します。授業は過去の授業の使いまわし、目の前の生徒の状況は一切考えずに、自分のやりたいことだけをやる。そんな先生の場合、労働時間は週40時間以内に収まるでしょう。その場合、単位時間あたりの給料は高くなる可能性があります。一方で、個々の生徒の状況を考え、わかりやすい授業をし、集団活動としての学びの場を提供し、かつ、学習や日々の生活に対するやる気を高められる。そんな、先生の場合、労働時間は週40時間を大幅に超過するでしょう。その場合は、単位時間あたりの給料は安いと言えると思います。
今回は、難関大学の学生の就職先として大人気の経営コンサルタントの給料と教員の給料とを比較していきたいと思います。経営コンサルタントの労働時間は著しく長いです。そのため、手を抜かずに仕事している教員と、経営コンサルタントの労働時間は、ほぼ同じぐらいになります。したがって、労働時間の長さについてはほぼ同条件になりますので、以下に記載している給料は同一の労働時間に対する給料を比較していると考えていただいてよいかと思います。
経営コンサルタントとは
そもそも経営コンサルタントの仕事とは
経営コンサルタントとは、企業の経営課題に対して助言をする仕事のことです。例えば、食品の製造販売をしているA社が日本だけでなく世界で自社の食品を製造販売したいと思った時に、どこの国でどのような食品を販売したらよいのだろうと考えたとします。そのような時に、経営コンサルタントは、高度な分析力を活かして、解決策を提示します。より詳しい仕事内容を知りたい場合は、下記のサイトを見てください。
経営コンサルティング会社は難関大学の大学生から大人気
ONE CAREERの調査によると、東大・京大に在籍する現役就活生(2020年卒=現在大学3年・修士1年の学生)のお気に入り企業ランキングにおいてトップ10企業のうち8社が経営コンサルティング会社となっています。
教員(公立・私立)と経営コンサルタントとの初任給を比較
上記のお気に入り企業ランキングのトップ10に記載されている経営コンサルティング会社のうち、初任給が公開されている企業のそれを以下にまとめました。
経営コンサルタントの初任給は、学部卒で経営コンサルティング職として入社する場合の初任給を記載しています。教員の初任給についても学部卒の場合の給与を記載しています。
募集要項に月額の表記しかない場合は、それを12倍して年額としています。
以下の初任給はいずれも2020年度採用の場合の金額です。教員は残業代がほとんどでないことを考慮して下表をご覧ください。
私は下記の表をみて私立の教員の初任給は思ったより高額だなと思いました。みなさんはどう思われますか?
社名 | 給与(月額) | 給与(年額) | 賞与 | |
コンサル | デロイトトーマツコンサルティング | ‐ | 5,302,400 円 | 年2回 |
教員(私立) | 攻玉社中学校・高等学校 | 250,100 円 | 3,001,200 円 | 年2回。 |
教員(私立) |
浅野中学・高等学校 |
248,000 円 | 2,976,000 円 | 年3回 |
教員(公立) | 東京都 高等学校 | 247,500 円※1 | 2,970,000 円 | 条例に基づき別途支給 |
コンサル | 野村総合研究所 | 221,500 円 | 2,658,000 円※2 | 年2回 |
教員(私立) | 東邦大学付属東邦中学・高等学校 | 206,600 円 | 2,479,200円 | 募集要項には記載なし |
教員(私立) | 法政大学第二中・高等学校 | 205,900 円 | 2,470,800 円 | 年2回 |
教員(私立) | 立教新座中学校・高等学校 | 201,000 円 | 2,412,000 円 |
年2回 |
※1 給料月額、教職調整額、地域手当、義務教育等教員特別手当及び給料の調整額(該当者のみ)を合わせた金額です。新卒者が都内(島しょ地域を除く。)の学校に採用された場合の例(平成 30 年4月1日現在)
※2 野村総合研究所の初任給は525万円になるとの情報もあります。
おそらくこの金額は基本給に加え、賞与と残業代を合算した金額だと思われます。入社する難易度とコンサル他社の初任給を考えるとこの金額の方が妥当な金額だと思われます。
野村総合研究所とデロイトトーマツコンサルティング以外の経営コンサルティング会社は、初任給を公開してませんが、著者の経営コンサルティング業界での経験を踏まえると、デロイトトーマツコンサルティングと同等かもしくはそれ以上の金額である可能性が高いと言えます。
現時点ではウェブサイト上に公表されていませんが、大都市圏の私立中高一貫校の一部の学校の初任給は年額で4,000,000円近くになる学校もあります。しかしながら、内定しないと給料を教えてくれない場合が多いので、全ての私立中高一貫校の初任給を知ることは難しいのが実情です。
<出典>
教員(公立・私立)と経営コンサルタントとの平均年収を比較
野村総合研究所は上場企業であるため平均年収が公開されています。ただし、この平均年収は、初任給の際に掲載したコンサルタント職だけでの平均年収ではなく、それ以外の職種を全て含めた平均年収です。デロイトトーマツコンサルティングは上場企業ではないため、平均年収は公開されていませんが、著者の経営コンサルティング業界での経験から踏まえると、平均年収は野村総合研究所と大差はないのではないかと思います。
私立学校の平均年収は公表されていませんので、記載できませんでした。具体的な学校名は言えませんが、有名私大の付属中高の採用説明会を私が参加した時に、その学校の管理職の先生が40歳ぐらいで年収は1,000万になるとおっしゃっていました。大都市圏にありかつ生徒の募集に困っていない有名私立中高の先生ならば、40歳ぐらいで年収が1,000万を超えると考えてよいと思います。それをふまえると、私立中高の先生の平均年収は、コンサルと都の教員との間ぐらいになるのではないかと推測されます。
社名 | 平均月収 | 平均年収 | 平均年齢 | |
コンサル | 野村総合研究所 | ‐ | 12,217,000円 | 40.3歳 |
教員 | 東京都 高等学校 | 463,702円※1 | 7,790,194円※2 | 45.2歳 |
※1 この金額は、「平均給与月額」であり、「平均給与月額」とは平均給料月額と月ごとに支払われることとされている全手当の額を合計したものである。そのため、賞与は含まれない。
※2 東京都人事委員会のウェブサイトに掲載されている年収モデルの数値から、平均年収は「平均給与月額」×約1.4であると予想されることから、それをもとに平均年収を推定した。
<出典>
野村総合研究所の平均年収 (2019年3月期有価証券報告書)
https://file.swcms.net/file/ir-nri/dam/jcr:3e8cc57e-e732-42ab-8467-5d6f221cfbde/S100G6WX.pdf
東京都 高等学校 (下記PDFの11ページ)
http://www.soumu.metro.tokyo.jp/03jinji/pdf/hakushotousin/30jinjigyousei.pdf